Case事例紹介

地域を越えて強みをつなぎ、
双方の成長を地域へ還元する。
左:小島 慶太様 中:吉田 祐司様 右:山田 巧様
譲渡企業 

株式会社日本地理コンサルタント

代表者名: 山田 巧様

事業内容: 建設コンサルタント業

譲受企業 

三栄グループ
株式会社三栄ホールディングス 

代表者名: 吉田 祐司様

事業内容: 建設コンサルタント業

M&Aの進行スケジュール

初回面談日: 2022/8/8

コンサルティング契約日: 2023/5/30

TOP面談: 2025/3/5

最終契約: 2025/6/2

創業から60年にわたり、静岡を拠点に測量や上下水道の計画・設計などを手がけてきた日本地理コンサルタント(以下、日本地理)。このたび静銀経営コンサルティング(以下、SMC)が、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行とのアライアンスを通じて支援し、岐阜に本社を置き、愛知・滋賀・東京等で総合建設コンサルタント事業を展開する三栄グループとの間でM&Aが成立しました。今回は、日本地理の当時社長であった山田氏と、譲受した三栄グループ、三栄ホールディングス社長の吉田氏、同社常務小島氏に、M&Aに至った経緯や、その後の変化について伺いました。

会社を残すだけでなく、強みを次へつなぐために

事業承継を考える中で、いちばん大きな課題は何でしたか。

山田様(以下敬称略): 事業承継を考え始めたのは、五年ほど前です。私はこの会社に長く勤め、社内承継で社長になりましたが、年齢的にもそろそろ次の世代へ託すことを考える時期に来ていると感じていました。創業家の立場にある会長も、自分たちが守ってきた会社を次につないでいきたいという思いを持っており、どういう形で事業承継するのがよいのかを相談しながら考えてきました。最初からM&Aだけを考えていたわけではなく、社内で次の経営を担う人が出てくれればという思いもありましたが、現実にはそれが難しかった。そうした中で強く感じたのが、単に社長を交代すればいいという話ではないということでした。当社のような建設コンサルタント会社は、技術や資格、お客さまとの信頼関係が事業の土台になっています。ですから、会社をどう残すかだけでなく、今ある仕事や技術をどう次へつなぐかまで含めて考えなければいけないと感じていました。

承継先を考えるうえで、特にどんな点を大事にしましたか。

山田: 大事にしていたのは、当社の強みやこれまでの仕事をきちんと生かしてくれる相手かどうかです。一つは、六十年続いてきた会社そのものをきちんと次につないでいけること。もう一つは、その中で積み重ねてきた仕事の中身です。当社は水道関係の仕事を長くやってきて、若い人にも技術を教えながら、必要な資格を持つ人材も育ててきました。許認可申請など、対応できる会社が限られる業務もありますし、長年にわたって築いてきたお客さまとの関係もあります。そうしたものは数字だけでは表せません。だからこそ、ただ引き継いでもらうのではなく、当社が歩んできた経緯や仕事の積み重ねを理解し、受け止めてくれる相手であることが大事でした。

建設コンサルタント業界ならではの事情はありましたか。

山田: この業界は、資格や技術者の有無によって受けられる仕事が変わってきますし、地域とのつながりも非常に重要です。特に公共案件では、地元での実績や体制が重視される場面もあります。逆に、民間案件では長年のお付き合いの中で信頼を積み重ねてきたお客さまがいます。そうした中で、県内の同業だと事業領域やお客さまとの関係が近い部分もあるため、県外で、あまり遠くなく、補完し合える相手の方がいいのではないかという考えはありました。単に「どこかに譲る」のではなく、この業界ならではの特性も踏まえながら、相手先を見ていたと思います。結果として、そうした考えに合う相手と、名古屋銀行とのアライアンスも活用したSMCの支援の中で出会うことができました。

承継先に求めたことと、その後の手応え

実際に統合後、どんな変化を感じていますか。

山田: 安心して事業を続けていける形になったというのがまず大きいです。そのうえで、実際の仕事にも変化が出てきています。相手先が持つ資格や体制を生かすことで、これまで当社単独では難しかった案件にも広がりが出てきましたし、新しい仕事にもつながっています。また、三栄グループの仕事の進め方に触れる中で、デジタルの活用や業務の進め方なども少しずつ見直しが進んでいます。会社を残すことが出発点ではありましたが、今はそこに加えて、会社の強みをどう次の世代に受け継ぎ広げていくかを考えるようになっています。

双方の成長を力に、地域へ新しい価値を広げる

御社にとってM&Aはどのような位置づけですか。

吉田様(以下敬称略): 私たちは以前から、M&Aを重要な経営戦略の一つと考えてきました。ただ、単なる規模拡大ではありません。建設コンサルタントの仕事は、一社だけで完結するものではなく、地域の行政や企業、建設会社など、さまざまな主体と信頼関係を築きながら進めていくものです。その中で、一社だけでは解決しきれない課題も多くあります。だからこそ、人と人、地域と地域がつながることで、新しい価値が生まれると考えています。今回のM&Aも、拠点を増やすことではなく、地域課題の解決力を高める取り組みとして位置づけています。当社が掲げるミッションは、「“いのこす”で創る、Amazingな未来のまち。」です。今回のM&Aも、地域に根差した力をつなぎながら、新しい価値を生み出していく取り組みの一つだと捉えています。(“いのこす”とはInnovation(革新)・Co-creation(共創)・Solution(解決)の頭文字をとった造語で、当社の強みであり、提供価値を意味。)

銀行同士の連携には、どんな意味がありましたか。

吉田: 今回のような出会いは、地域の中だけを見ていてもなかなか生まれなかったと思います。静岡の会社と岐阜の会社が、単に条件だけで結びついたのではなく、お互いの方向性や補完関係まで含めてつながった。その背景には、銀行同士の連携があったと感じています。私たちの仕事でも同じように、災害対応をはじめ、一つの地域だけでは対応しきれない場面があります。隣県同士で助け合い、協業することで、よりよいサービスにつながる。今回のM&Aは、そうした広域連携の考え方が、企業同士の承継にも生きた事例だと思っています。

日本地理コンサルタントに関心を持った理由は何ですか。

吉田: 一つは、水道インフラや土地開発の分野で高い専門性を持っていたことです。特に水道分野は、今後更新需要がさらに高まっていく領域であり、当社としても強化したいテーマでした。それに加えて、長年地域に根差して仕事をし、お客さまとの信頼関係を大切にしている姿勢にも強く共感しました。さらに、山田社長とお話しする中で、会社や社員の未来を真剣に考え、前向きに次の形を模索されていることが伝わってきました。同じ方向を向いて、一緒に成長していける相手だと感じられたことが、最終的な決め手になったと思います。

M&Aで大切にしている考え方を教えてください。

吉田: 私たちが大事にしているのは、こちらだけが満足するM&Aではないということです。相手先にも「一緒になってよかった」と思っていただきたい。そのためには、技術や事業の相性だけでなく、文化や価値観、地域で築いてきた信頼関係も尊重する必要があります。双方が満足し、双方が成長できる形でなければ、本当の意味でのM&Aにはならないと思っています。

対話を重ね、価値観を共有しながら強みを生かしていく。

統合後、どのようなことから進めていますか。

小島様: 一番大事にしているのは、相手の色を消さないことです。地域に根差してきた会社には、その地域で築いてきた関係性や信頼、独自の文化があります。ですから、私たちが前に出すぎるのではなく、日本地理が前に立ち、私たちは後ろから支えながら力を加えていく形を意識しています。そのため、会議の場だけでなく、日々のコミュニケーションを通じて一人ひとりの考えを聞き、価値観を少しずつ共有していくことを重視しています。私も頻繁に静岡へ足を運び、できるだけ直接顔を合わせながら対話を重ねてきました。こちらのやり方を押しつけるのではなく、その会社や地域に合ったスピードで変化を進めていくことが大切だと考えています。
技術交流や人材交流はすでに始まっており、相乗効果も具体的な形で表れ始めています。中でも水道分野では、日本地理から技術者に来てもらい、当社でも水道事業を手がけられる体制を整えたことで、新たな受注にもつながりました。得意分野の違う二社が一緒になったからこそ生まれた成果だと思っています。今後は、当社が持つ専門技術やドローン、解析技術なども共有しながら、日本地理の中で新しいサービスが提供できるようにしていきたいと考えています。これまで単独では難しかった課題も、一緒にやることで解決できるようになる。その結果として、その先のお客さまにも、より高い価値を届けていけるはずです。

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