Case事例紹介
M&Aで整備士確保の課題解決へ。
有限会社石井自動車整備工場
代表者名: 石井 康祐様
事業内容: 自動車整備業
東海自動車工業株式会社
代表者名: 大賀 了様
事業内容: 自動車整備業
初回面談日: 2022/6/6
コンサルティング契約日: 2024/5/30
TOP面談: 2025/1/25
最終契約: 2025/5/30
創業98年、静岡市清水区で軽自動車から大型車両まで幅広く整備を行ってきた石井自動車整備工場(以下、石井自動車)。このたび静銀経営コンサルティング(以下、SMC)のサポートにより、静鉄グループの東海自動車工業(以下、東海自工)との間でM&Aが成立しました。M&A成立の要因には、整備士人材の確保という業界共通の課題があったといいます。今回は、石井自動車の石井社長、譲受した東海自工の大賀社長、静岡鉄道の二村様に、M&Aに至った経緯やお考えを伺いました。
会社の将来のためのM&Aという選択。
石井社長(以下敬称略): 祖父の代から自動車整備業を営んできて、創業98年になります。自分の子どもに後を継ぐ意思がないということと、長年二人三脚でやってきた妻が病を患いまして、それをきっかけに真剣に会社の将来を考えるようになりました。万が一、自分に何かあったときに従業員や取引先に迷惑がかからないようにしたいという思いが強くなり、静岡銀行の担当の方からSMCさんをご紹介いただいて3年ぐらい前から少しずつM&Aを考えはじめました。SMCさんは地元の銀行の関連会社であるということ、また静岡県内全域を網羅されているということで安心感がありお願いしました。
石井: 今は整備士の採用が非常に難しい状況で、このままではお客様のご要望に満足にお応えできなくなっていくのではないかという懸念も常にありました。
大賀社長(以下敬称略): 人材確保は業界全体の課題ですね。ご家族で経営されている工場が多いのですが、整備士の採用ができないので、受ける仕事を減らしていって緩やかに廃業に向かっていくようなパターンが多くあります。
石井: 長く支えてくださった地元のお客様や従業員を大切にしていただけるということが一番の条件で、共通の目標や理念を掲げている企業にぜひお願いしたいという思いがありました。それから、会社は祖父と父から受け継いだ大切なものなので、会社名はできれば残したいと思いました。
大賀: 東海自工は今年で設立80年で、石井自動車と同様に長くこの地場で自動車整備業を営んできました。同じ業界の仲間という部分もありますし、課題感や、お客様や従業員を大切にしようという思いは全く同じで、M&Aのお話をいただいたときに、「それだったら、うちがぴったりだ」とすぐに思いました。
当社にはバスやトラックの整備を通じ静鉄グループの運輸事業を支えていく役割がありつつ、グループ外のお客様も多くいらっしゃいます。今は整備士の総数が社会全体で足りないのですが、なかでも大型の車を触れる整備士はさらに絞られます。大型の事業を続けていくためには、チームの規模をもっと大きくして、人を採用し、教育体制を整えて一人前に育てていくというサイクルを、もう少し大きな枠組みのなかで回していく必要があるとの課題がありました。
整備士育成や自動車業界の変化に、手を携えた取り組みを。
大賀: 大型の車というのは地域の経済を支えていると思っています。石井自動車で扱っているトラックやトレーラーは、清水の港湾の産業を支える車になりますので、それらを整備する大型の整備工場が廃業に向かってしまうと地域の産業自体がダメージを受けることになります。整備士不足で整備業界全体がダウンサイジングしても、需要が減るわけではないんです。自社としても業界としても、供給力をどう維持していくのかというのは、とても大きな課題になっています。力を合わせて、地域の需要に応えていくことが求められていると感じています。
石井自動車は98年、当社は80年、それぞれが長い時間をかけて培ってきたノウハウがあります。技術は整備士一人ひとりに蓄積されるものですが、それに加えて、チームとしての動き方や仕事の進め方は、会社ごとに大きく異なります。日々の業務の中では、どうしても視野が狭くなりがちですが、他社のやり方を知ることは大きな刺激になります。今回のM&Aをきっかけに、それぞれの良さを活かし合いながら新しい風を取り入れ、お互いを高め合うような形で協業を進めていきたいと考えています。
石井: 他の工場のやり方を知ることで視野が広がり、これまで当たり前だと思っていたことが、必ずしも当たり前ではないと気付ける良いチャンスだと実感しています。当社はこれまでワントップでやってきた分、その進め方が足かせになっている部分もあると感じています。今回の取り組みをきっかけに、そうした点を少しずつ解消し、より良い組織づくりへとつなげていければと思っています。
大賀: 石井自動車でもバスを扱っていますし、東海自工でもトラックやトレーラーを手がけています。ただし、その比重はそれぞれ大きく異なります。バスとトラックでは構造や整備の仕組みがかなり違うため、今後は効率面も踏まえながら、これまでそれぞれが受けてきた仕事を役割分担していくこともできるのではないかと考えています。
また、整備業界も法改正や技術の進歩があり、大きく変化しています。例えば、自動運転車ですね。法改正により、自動運転車の車検を整備工場で行う場合は1級整備士の資格が必要になりました。そういったルール変更や車の変化に応じた新しい技術への対応も、それぞれでやるよりも一緒にやったほうがいいですよね。これからの新しい車は過去のノウハウではなかなか対応できないものも出てきますので、最新の情報や技術をキャッチアップしていく必要があります。チームの規模を大きくすることは、ノウハウを磨いていくという点でもよい部分があると思います。
未来を見据えて、次の時代にバトンをつなぐ。
石井: 成約以前はなかなか先が見えない状態だったのですが、次の時代にバトンをきちんと渡すことができ、気持ちとしてはホッとしています。静鉄グループの一員となったことで社会的な信用も増したように思います。以前から当社の将来について気に掛けてくださるお客様もいらしたので、安心してくださったのではないかと思います。従業員の中には、新しい動きに触れる中で、多少の不安を感じた者もいたようですが、会社の将来と一人ひとりの働く環境を守るための前向きな選択であることを丁寧に伝えてきました。今では、その思いを理解し、前向きに受け止めてくれていると感じています。
石井: M&Aはご縁とタイミングがすごく大事なので、早めに専門の方に相談して情報収集を始めることをおすすめします。ある程度余裕があるうちに情報収集を始め、じっくり考えられるとよいと思います。
大賀: M&Aはそれぞれの会社にとって、非常に大きな転機になります。取引の成立がゴールではなく、未来のためという視点が大事だと思いますね。SMCさんは、M&A後もずっと気に掛けていただける点が安心感につながっています。今回スムーズに進められたのは、そういう信頼関係が築けたこともかなり大きいと思います。
地域のインフラを担うグループとしての課題意識。
二村氏(以下敬称略): 私の所属する未来事業創造部では、静鉄グループの持続可能性向上に向け、既存事業の変革、新規領域の探索の両面から様々な取組を進めています。 M&Aの目的は、新たな事業の創出や成長の加速にあると思いますが、当社グループの場合は、「地域のインフラを支えるため」という視点も加わってきます。
当社グループは鉄道事業から始まり、交通事業を軸に事業展開を進め、発展してきました。企業価値の源泉であり、地域のインフラである交通事業を、我々は維持していく責務があると考えています。コロナ禍をはじめ事業環境の著しい変化に対応すべく、交通事業の変革を進めているところですが、それを支える大型整備事業も同様です。
二村: 今回は両社の課題認識がうまくはまり、かなりスムーズに検討が進みましたが、企業文化が近かったことも大きな要因です。お話を伺っていく中で、実直な石井社長をはじめ、従業員の皆様が誠実に事業と向き合ってきたことを強く感じ、当社グループにもすぐに溶け込むだろうな、と思いました。
事業変革を進めていくにあたり、自社の経営リソースだけでは限界もあります。新たな仲間を外部から迎え入れることも選択肢の1つであり、可能性が大きく開けるチャンスと捉えています。M&Aは「契約を結んだ瞬間」がゴールではなく、そこから両社で新しい価値を育てていくプロセスこそが本番です。だからこそ、これからの歩みを何より大切にしていきたいと考えています。