
Case事例紹介

ワコサイトグループ
代表者名: 斎藤 民夫様
事業内容: 美容室運営事業
雄大グループ株式会社
代表者名: 土屋 雄二郎様(代表取締役会長)
事業内容: 持株会社(飲食業主体のサービス業)、グループ会社の経営戦略立案他
初回面談日: 2023/11/14
コンサルティング契約日: 2024/12/28
TOP面談: 2024/3/27
最終契約: 2024/10/11
静岡県東部を拠点に、美容室約90店舗を運営するワコサイトグループと、飲食を中心に多角的なサービス業を展開する雄大グループがM&Aを実施しました。地域に根ざしながら事業を拡大してきた両社が、それぞれの強みを融合し、新たな価値の創出を目指します。ワコサイトグループの創業者・斎藤民夫さんは、12年前にもM&Aを検討しましたが、一時中断。その後、再び検討を重ね、今回の成約に至りました。譲渡を決意するまでの葛藤や期待、そして譲受企業である雄大グループがM&Aに込めたビジョンや方針について、それぞれにお話を伺いました。
一度の中断を経て決断したM&A
斎藤さん(以下敬称略): 当社は静岡県と栃木県で美容室事業を展開し、約90店舗を運営してきました。当社で働いてくれる人、主には女性の働きやすさを重視し、日曜・祝日休みや17時までの営業、自立性を尊重した店舗運営などに取り組んできました。一般的に美容業界では経営スキルを持つ人材の育成が難しいという課題があります。この地域においても、独立する技術者は多いものの、当社のように90店舗規模の経営を担える後継者を育成・確保することは困難でした。こうした状況を踏まえ、年齢や健康面も考慮し、M&Aによる事業承継を真剣に検討するようになりました。
斎藤: 実は、12年前に一度M&Aを検討しました。当時、事業にはまだ成長の余地があり、M&Aを活用することでさらなる拡大を図ることも考えましたが、「まだ自分でやれるのではないか」という思いもあり、最終的には自力での成長を目指すことにしました。その後、事業は拡大しましたが、やはり後継者を確保することは難しく、事業承継の課題は残ったままでした。そこで、静岡県事業承継・引継ぎ支援センターに相談し、静銀経営コンサルティングを紹介してもらいました。M&Aのサポートを依頼したところ、雄大グループと出会うことができました。担当者によると、雄大グループは12年前に当社がM&Aを検討した際にも興味を持ってくれていたそうで、まさにご縁を感じました。
異業種企業への譲渡により新たな成長を
斎藤: 当社に関心を寄せてくださった企業はいくつかありましたが、最終的に雄大グループを選んだ決め手は、社名の由来にも通じるような、土屋会長の富士山のように雄大で包容力のある人柄に安心感を抱いたことでした。また、M&Aを進めるなら異業種の企業が良いと以前から考えていました。当社の日曜祝日定休や自立性を尊重した経営は美容業界では珍しく、十分に理解されない部分もありました。そのため、理念を大切にしながら新たな価値を生み出してくれる異業種の企業の方が、当社をより良い方向へ導いてくれると考えていたのです。
斎藤: 私たちはこれまで、働きやすさを重視した経営を大切にしてきました。雄大グループには、この方針を尊重しながらも、新たな視点を取り入れることで、事業がこれまでにない成長を遂げることを願っています。また、新社長に就任された後藤さんの明るく前向きな姿勢にも大いに期待しています。M&Aを通じて、美容業界全体にも新たな価値が生まれることを楽しみにしています。
斎藤: 事業承継を考えている方は、できるだけ早い段階で情報収集を始めることをお勧めします。M&Aをすぐに進めるかどうかは別として、若いうちから選択肢の一つとして意識しておくだけでも、いざというときにスムーズに対応できます。また、M&Aの相手を選ぶ際には、自身の理念や価値観に共感してくれる企業を見つけることが重要です。そのような相手であれば、譲渡後も会社の成長に期待ができ、より良い未来へとつながることを実感しました。今回、納得のいく形で譲渡を進めることができたことに感謝するとともに、これからのワコサイトグループのさらなる発展を願っています。

他業種への展開、そして次世代への基盤強化を見据えたM&A
土屋: 当社は沼津を拠点に、飲食店、カラオケ店、通信事業など、幅広いサービスを展開しています。私たちの社是は「遊楽」。スタッフ自身が仕事を楽しみ、創意工夫や遊び心を持ってお客様と接することで、喜びや楽しさを提供することを大切にしています。近年はさらに事業の幅を広げ、多様なサービスを展開しています。
土屋: 地域を中心にビジネスを続ける中で、業種が限られると自社競合が生じることがあります。そのため、異なる業種・業態への展開は自然な流れであり、当社は一般消費者向けのサービス業の中で、新規事業の立ち上げやM&Aによりその幅を広げてきました。それぞれの事業間で相乗効果が生まれ、顧客情報の蓄積も可能となります。また、個人的にも新しいことに挑戦することを楽しんでいます。本来、業種を絞る方が効率的ですが、ホールディングス化によってグループで多業種展開を行いつつ、各社が専門性を高める体制を構築しています。これまでに、保育園、ゴルフ練習場、温泉施設などをM&Aを通じて事業展開をしてきました。
新しい経営の視点を得られるM&A
土屋: 当社と同様に東部地域を中心に展開しており、ターゲット層も重なるため、シナジーが生まれると感じました。また、創業者の斎藤さんが美容院業界において独自の経営スタイルを確立していた点にも魅力を感じました。例えば、日曜日定休や17時までの営業時間、少人数運営の小型店舗、スーパーへの出店など、特徴的な手法を取り入れており、同じ「人」を軸とするサービス業として、社員を大切にし、働きやすい環境を整えている点に共感しています。さらに、給与と売上を結びつける仕組みを導入し、社員が経営意識を持てるようにしている点も印象的でした。異業種だからこそ得られる視点があり、こうした新しい経営手法を学べることもM&Aの大きなメリットだと感じています。

土屋: これまで多様な業種を経験してきたため、新業種への参入については不安よりもむしろ新しい挑戦への期待感の方が大きいです。美容室業界は「人」がすべてであり、機械に代替されることはありません。そのため、人材の採用と定着が最大のポイントになります。人手不足の時代ではありますが、独自の採用戦略と人材の定着施策を確立できれば、競争力を強化できると考えています。

新たな価値の創造を目指して
後藤: 現在、全店舗を巡回しながら状況を把握し、情報収集を進めています。M&A成立から2ヶ月が経ちましたが、最も意識しているのは、社員に不安や負担をかけないことです。そのため、M&Aに至った経緯や今後の展望を丁寧に説明してコミュニケーションを取っています。店舗を回る中で、バックオフィスの仕組み化を進めることで、経営判断のスピードを向上させる必要性を感じています。また、特に県東部エリアの店舗では、当グループの認知度が高く、期待の声も多く寄せられています。こうした声を大切にしながら、改善要望にも積極的に対応していきたいと考えています。採用計画も進めており、美容業界の特性を踏まえた採用戦略を構築していきます。

後藤: M&Aが成立する前はもちろん不安もありましたが、実際に店舗を回り状況を把握するにつれ、その不安はモチベーションに変わりました。土屋会長や土屋社長のサポートのおかげで、安心感もあります。これからは、学びながらより良い経営を目指していきます。

土屋: M&Aの目的は規模の拡大だけでなく、新しい経営視点を学ぶことにもあります。異業種の経営手法を取り入れることで、事業運営の幅を広げることができます。また、M&Aは時間を買う手段でもあります。例えば、今回のように美容室をゼロから90店舗展開しようとすると膨大な時間がかかります。新規事業への参入にはリスクもありますが、M&Aであれば既存の実績を活用できるため、成功の確率を高めることができます。
さらに、M&Aは次世代への準備にも繋がります。若い世代が活躍できる場を作り、会社を常に進化させることが求められます。コロナのような社会的リスクが発生した際にも、事業を分散させることで影響を最小限に抑えられます。会社の基盤を安定させ、持続的に成長するためにも、M&Aを積極的に活用していきたいと考えています。
