Case事例紹介

地域密着型の医療・介護事業を礎に、
次世代へ繋ぐ組織の再構築。
代表取締役 白石 誠一郎様
企業情報 

うさぎ薬局株式会社

代表者名: 白石 誠一郎様

事業内容: 静岡県をはじめ、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県にかけて、調剤薬局43店舗(2025年8月現在)を展開。介護事業にも力を入れている。

うさぎ薬局グループは、薬局事業から介護事業へと、地域の声に応じながら事業の幅を広げてきた会社です。今回、将来の事業承継と地域医療へのさらなる貢献を見据えて、ホールディングス化と事業再編に踏み切りました。この記事では、静銀経営コンサルティング(以下SMC)が計画と実行をサポートさせていただいたこの取り組みや、その背景にある想い、そして地域医療・介護のこれからについて、社長のインタビューを通じてお届けします。

地域ニーズに応えて広がった事業。医療と介護の連携で暮らしに寄り添う。

現在の会社の事業について教えてください。

白石様(以下敬称略): うさぎ薬局は、2000年の創業以来、静岡県を中心に薬局を展開してきました。今では県外も含めて、薬局は全部で43店舗になっています。高齢化が進む中で、地域包括ケアの必要性を強く感じるようになり、ちょうど介護保険制度が始まった頃から、介護分野にも取り組み始めました。ケアプランセンター、ヘルパーステーション、訪問看護、認知症対応型グループホーム、有料老人ホームと、少しずつですが事業を広げてきました。

事業を広げる中で一貫してきたのは、地域のニーズに応じてその都度必要とされることに応えてきた、ということです。こちらから無理に拡大を狙ってきたわけではなく、目の前の困りごとに向き合ってきた結果、自然と領域が広がっていったという感覚です。そうしたニーズを捉えることができたのも、私自身も含め、現場に出ることが多く、地域の方々の声を直接聞いてきたからだと思っています。

そうした中でも、創業した伊東市は私たちにとって大きな学びのある地域でした。静岡県内でも特に早く高齢化が進んだエリアで、今では高齢化率が45%を超えています。この地での経験は、今後高齢化が進んでいく沼津市、三島市、静岡市といった都市部にとっても、ヒントになる部分が多いと感じています。

今後も、地域ごとの状況に合わせながら、それぞれの特性に応じたサービス体制を整えていくつもりです。伊東での取り組みをベースにしながら、地域に合ったやり方で、もっと多くの人たちの暮らしを支えられる存在になれたらと思っています。

社員にバトンをつなぐために。将来を見据えたグループ経営への転換。

ホールディングス化に至ったきっかけを教えてください。

白石: 一番のきっかけは、やはり事業承継の課題でした。創業から25年が経ち、そろそろ次の世代への引き継ぎを考える必要があると感じていた中で、SMCさんに相談したところ、ホールディングス化という選択肢を提案してもらいました。親族に後継者がいないこともあり、以前から「将来的には社員の中から会社を引き継いでもらえたら」と考えていたのですが、実際にはどうすればそれが実現できるのか、具体的な道筋までは見えていませんでした。このホールディングス体制にすることで、経営と資本を分けることができ、社員が株式を保有するハードルも下がります。それによって、従業員による承継の可能性も現実的に考えられるようになりました。

実際には、株式の買い取りではなく「株式移転」という形を取ったので、大きな資金を用意せずにホールディングス化を実現することができました。経営者や社員にとっての心理的・経済的負担を軽くするという意味でも、良い方法だったと感じています。私自身、制度や仕組みにはそれほど詳しくなかったのですが、SMCさんにサポートをお任せすることができ、安心して進めることができました。

ホールディングス化によって、どのような効果がありましたか?

白石: まずは、事業ごとに損益を明確に管理できるようになったことです。各事業会社が独立した単位で数字を見られるようになり、経営判断のスピードも上がりました。経営資源をグループ全体でどう最適に配分していくかという視点も、より戦略的に考えられるようになったと感じています。

もうひとつの大きな変化は、社員が経営に関わる道筋が明確になったことです。これまでも、「いずれは従業員に会社を継いでもらえたら」と言葉では伝えてきましたが、正直なところ、それが本当に実現できるかは漠然としていて、社員側から見てもあまり現実味がなかったと思います。それが、ホールディングス化をきっかけに仕組みとして整ったことで、社員に対しても「承継させる意思がある」と伝わるメッセージになったと思います。

合わせて事業再編を行った意図や経緯、その効果を教えてください。

白石: ホールディングス化にともない、経理・人事・総務などの間接部門をホールディング会社に集約し、薬局事業や介護事業を担う子会社との役割分担を明確にしました。業務の性質が違うので、制度としてきちんと整理したことで、コストの見える化や収益管理がしやすくなりました。各事業会社は本業に専念し、間接部門はグループ全体を横断的に支える体制が整ったことで、効率性の向上も期待できます。また、不動産の管理もホールディングス側にまとめる形を取りました。

一方で、分社化によって責任は明確になりますが、その分、ホールディングスと事業会社、薬局と介護の現場同士の横のつながりは、意識しないとどうしても薄れてしまいます。だから今は、全社的な勉強会や会議を定期的に開いて、情報を共有する機会を意識して作っています。グループ全体としてうまく連携しながら進んでいけるよう、今後もいろいろと工夫していきたいと思っています。

地域に必要とされる進化へ。医療・介護の未来像を形にする取り組み。

100億宣言について教えてください。

白石: 私たちとしては、100億円という金額そのものを目指しているわけではありませんが、地域のニーズに応じて必要な事業を積み重ねてきた結果、そういった規模感になっていくという捉え方をしています。また、100億宣言を行うことで、国の補助金申請などにおいて優遇されるケースもあるため、そういった意味では、戦略的に活用できる選択肢のひとつだと考えています。

現在、三島市で駅前再開発が進んでいて、そこに医療と介護の機能を備えた複合施設を作る計画があります。順天堂大学の新クリニックと連携し、最新のシステムを導入した調剤薬局、介護施設をワンストップで提供する構想です。さらに当社としては近くに会議室や研修室を備え、スタッフがアクセス良く集まりやすい場をつくることで、将来的な地域包括ケアのモデルケースにしていけたらと思っています。

こうした新規プロジェクトには当然ながら大きな投資が必要ですが、100億宣言による各種支援措置が、その一歩を後押ししてくれる存在になっています。各種支援を受けながら、地域に必要とされる医療・介護の形を深めていきたいと考えています。

今後の展望を教えてください。

白石: これからも、地域のニーズに寄り添いながら、必要に応じて事業を広げていく方針です。これから高齢化が本格化すると言われている地域では、伊東市で培ってきた25年の経験を活かして、医療と介護の連携拠点づくりを進めていきたいと考えています。

事業承継についても、社員の中から次の経営者を育てていくことを引き続き意識しています。やはり一番大切なのは、志や理念に共感してくれる人を採用していくことだと思っています。そうしていけば、日々の仕事の中で実を積み上げてきた人が、自然と次の経営者候補として育っていく。結果をきちんと出してきた人が上がっていける、そんな組織でありたいと考えています。

「医療・介護を通じた社会貢献」という理念のもと、地域の方々と一緒に歩んでいける医療や介護の形を、これからもつくっていきたいと考えています。

他のコンサルティング事例

M&A

同業種間M&Aで、BtoBとBtoC、
相互の強みを生かした成長に期待。

有限会社太陽様

M&A

M&Aで未来へとつなげる、
共創による成長戦略

古田屋様

M&A

地域の未来を共創する
異業種M&Aの新たな挑戦

ワコサイトグループ様

M&A

木製建具の歴史を受け継ぐ。次世代経営者の新たな挑戦

濱建工業株式会社様

サステナビリティ

井川の広大な森林の価値を活かす J-クレジットの創出

十山株式会社様

M&A

創業約100年を迎える会社の歴史を引き継ぐため、M&AとMBOで承継の可能性を探る。

株式会社CROSS LINK様

その他

単なる効率化を目的としない、競争力強化につなげるDX

浜商事株式会社様

M&A

真鶴魚市場の存続と社員の雇用を守るためM&Aによる事業承継を決断

有限会社かねか水産様

M&A

酒蔵のM&Aで人と設備に大胆な投資。新生「葵天下」が遠州地方の活性化を目指す

遠州山中酒造株式会社様

M&A

江戸時代から続く商社が異業種間M&Aを決断。廃業寸前からの再スタートに「面白いことをやりたい」

有限会社ヘリヤ商会様

経営支援 事業承継

事業承継は筋書き通りに進まないのが当然。二代目社長が手探りで見つけた経営者への道

株式会社丸玄工芸様

経営支援 事業承継

会話のなかった親子が事業承継に成功。二代目社長が「人の命を守る会社」を引き継ぐまで

有限会社アーク様