Shizuoka's Leading Companies静岡地域中核企業
新商品の開発に精力的に取り組み
長期に渡り堅調な成績を維持
同社は、1953年に平松節一(せついち)氏が小笠郡大坂村(現・掛川市)で立ち上げた和菓子店を原点とする。地域の行事にも用いられた「どら焼き」や「最中」を手がけ、地域の人々に寄り添う町の和菓子屋として成長してきた。
たこ満という独特の社名は、創業者が東京で食したたこ酢のおいしさに感動し、「自分も菓子屋として一生を賭けるなら、このたこ酢に負けないくらいおいしい菓子を作り、多くのお客様の心を豊かに満たしたい」との想いを体現したものだ。
同社が洋菓子部門を立ち上げる契機となったのは、入社したての若手社員による「たこ満でケーキづくりをやりたい」という提案である。これを機に、洋菓子づくりと法人化に踏み出した同社は、「小笠郡に7店舗を展開し、年商5億円規模へと成長する」というビジョンを掲げ、着実に成長を遂げた。1982年には、菊川市上平川に本社と小笠工場を整備し、製造拠点を一本化。同時期に「遠州大砂丘」の風景に着想を得て、県内産の卵を使ったスポンジ生地にチーズクリームなどをサンドした看板商品「大砂丘」を生み出した。
その後、1990年から2019年までは、創業者の息子である平松季哲氏が代表を務めた。イートインスペースの設置や、きめ細やかな顧客サービスなどの店舗運営の工夫と商品開発に注力し、コンビニスイーツの台頭や少子化といった市場の変化にも動じず、堅調な業績を維持してきた。そして、19年には前堀誠氏が代表に就任。25年にはビュッフェ形式で作りたての焼き菓子を楽しめる店舗「掛川果樹公園アトリエテラス」を展開し、休日は予約が取れないほどの盛況をみせている。
「身土不二」の精神のもと
地元の食材を生かした菓子づくりにこだわる
菓子づくりにおいて、同社は地元でとれた旬の食材を新鮮なまま食すのが健康に良いという「身土不二」の価値観を重視する。商品にはできる限り地元の新鮮な素材を活用することにこだわり、地元農家との連携を強化してきた。具体的には、いちごの「紅ほっぺ」や静岡茶、マスクメロンなど多くの素材を県内から調達しているほか、2021年には、掛川市にある契約農園を引き継ぐ形で自社農園「くりくり園」を設立(写真2)。24年には栗の加工ラインを確立し、素材の調達から加工まですべて県内で完結するサプライチェーンを構築した。また、掛川市の「掛川果樹公園」では、いちごやブルーベリーなどの果樹の試験栽培を行い、産学連携による味や栽培方法の研究成果を地域農家に還元することで、素材の品質向上とブランド化を図っている。
これらの新鮮な食材は、最終的にすべて小笠工場に集められ、菓子に加工されている。主力商品の「大砂丘」シリーズでは、「ベリージュエル」や「マロン」など、旬の果実を生かした限定フレーバーをラインナップに加える。また、フリアンと呼ばれるバターや小麦粉を混ぜた正方形の定番焼き菓子を、静岡の煎茶・抹茶両方の味が楽しめるようアレンジした商品「薫居」や、季節ごとにアレンジされたショートケーキ、バウムクーヘンなど、毎年多くの新作が発表されている。
こうした高い開発力を発揮できるのは、直営店で把握した顧客ニーズを販売日報の形で本社に還元する仕組みと、従業員と経営層との密接なコミュニケーションが生きているからにほかならない。これらの情報の活用や、経営陣の経験・日常から得たヒントをもとにアイデア出しが行われる。生み出されたコンセプトは開発部門が練り上げ、トライアンドエラーを繰り返しながら商品化する。毎年多くの新商品を自社開発してきた同社には、多くのノウハウが蓄積され、近年では、この開発力を自社ブランドにとどめず、他地域の中小菓子メーカーと連携したOEM事業にも応用されている。
たとえば、2023年に同社の子会社となった朝霧乳業㈱と開発した、濃厚なミルククリームとサブレの組み合わせが人気な「the MILK(ザ・ミルク)」や、沖縄県の㈱宮古島の雪塩と共同開発した「雪塩ラスク」などの製造を手がけてきた。OEM事業の売上は年間約3億円で、直営販売の約20億円に次ぐ収益源へと成長。さらに強化すべく、パートナーの意向への対応力と商品開発力の向上を図っている。
顧客満足度向上のため
活力ある職場づくりに注力
顧客へのサービス品質を一段と高めていくことを狙い、同社では、自社商品のほとんどを直営店で販売している。直営店の多くはイートインスペースを備え、居心地のよい空間づくりを重視している。街中で手軽に楽しめるスイーツが増加する中、売り方を工夫することで他社と差別化。同社を長く愛用するファン層の獲得や、競合が現れる中でも堅調な業績を上げることにつながっているという。
また、働き手である従業員の満足度向上にも力を入れている。経営理念に「ひとりのお客様の満足とひとりの社員の幸せ」を掲げる同社では、従業員の満足度向上が、直営店でのサービス品質の向上につながり、それがさらに顧客の満足度につながると考え、経営層主導のもと、従業員がいきいきと働ける職場環境が整備されている。会長など経営陣自らが店舗を訪問し、日ごろから社員とコミュニケーションをとる文化を築いているほか、販売日報の一部を「デイリーニュース」という形で全従業員が共有することで、経営者の想いや経営理念を社内に浸透させる仕組みを確立しているのである。
また、従業員の希望する部署への配属や、掛川果樹公園での障がい者雇用の促進、工場における女性従業員の雇用促進など、多様な働き方を実現するための環境整備も行っている。加えて、会社は経営者のものではなく、従業員全員の共有物という考えのもと、会社の営業利益などを全社員に知らせ、一定割合の利益還元も行っている。
さらに、職場内のコミュニケーションの促進策として「ありがとうカード」という、社員同士が感謝の気持ちを伝えあう仕組みを作り、いきいきと働ける職場環境づくりに力を入れている。これらの工夫により、直売店で従業員が顧客にお茶をふるまうといった細やかな気配りを自発的に行うようになり、顧客満足度の向上のほか、従業員の定着率向上にもつながっている。
新工場を設立し
乳業×菓子づくりの領域へと踏み込む
2023年4月、朝霧乳業㈱を買収した同社は、これから「あさぎり牛乳」の加工工場を立ち上げようとしている。富士宮市に新工場を設け、取れたての生乳を新鮮なままチーズやバターに加工、小笠工場へと出荷するサプライチェーン構築が目標だ。乳製品の自社工場での加工は、中小企業の菓子メーカーでは珍しく、新鮮な乳製品を生かした新商品の開発、菓子の品質向上に確かな手ごたえを感じている。
また、生産面では、人手不足の深刻化が見込まれる中、手づくり感を残した生産工程の機械化の方法が模索されている。
同社はこれまで、「身土不二」の理念のもと、地元素材へのこだわりと従業員との信頼関係、地域農家や顧客とのリレーションを大切にしながら、遠州地区を中心に多くのファンを育んできた。今後、乳製品加工という新たな分野への挑戦と生産体制の変革が、より魅力的な菓子の開発とさらなるファン獲得につながるか、同社の動向から目が離せない。
研究員 三浦 正也
Miura Masaya
株式会社 たこ満
代表取締役/前堀 誠
所 在 地/菊川市上平川 565-1
設 立/1977年(昭和52年)
売 上 高/30億円(2024年6月期)
従業員数/380人(2025年10月時点)
事業内容/和洋菓子の開発・生産・販売
U R L/https://www.takoman.co.jp/
一般財団法人静岡経済研究所「調査月報2025年12月号」より転載