Column社員コラム

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事業承継の現実と危機感
日本企業の後継者不在率は2025年に50.1%まで低下し、過去10年で最も高かった2017年から16.4ポイント改善しました(帝国データバンク)。改善の背景には、官民の相談窓口や支援メニューの拡充、M&Aを含む承継手段の多様化があります。静岡県も2024年に50.3%と過去最低を記録し、改善が確認されています。
一方で、2024年時点で社長の平均年齢は60.7歳。調査開始以降、伸長傾向が続いています。承継の意思決定は進んでいるが、実行が遅れている傾向が見られます。
背景には、属人的な経営スタイルの残存、後継者育成の長期化、不確実な環境(VUCA~変化が激しく、先が読めない時代)下で従来モデルの機能不全に陥っている現実があります。つまり、承継の意思決定はすませているが、経営権の移譲に踏み切っていない実態がうかがえます。
後継候補者の育成がままならない、経営に求められる知識や判断が高度化している等を理由に、「自分が続けるしかない」と、どこかで思い込んでいませんか?社長の平均年齢が上がり続けている現実は、まさに“自分ごと”として向き合うサインです。また、その「思い込み」は、属人化してきた経営スタイルが根強く残っていることを表しているかもしれません。
後継者・被後継者の本音(動機・ためらい)
後継候補者の視点に立つと、「事業に伸びしろややりがいを感じた」「収入が上がると見込んだ」など、事業の“魅力”が承継意欲の源泉です。一方、「経営に興味がない」「技術・ノウハウを身につけていない」「リスクを負いたくない」といった理由で承継をためらうケースも多く見られます。(日本政策金融公庫論集第56号より)
つまり、事業の魅力が本人に伝わらず、能力を磨く道筋が見えないと、承継意欲は高まりません。これは、経営者・後継候補者双方の課題です。
技術的問題と適応課題 両面への対応
事業承継には、制度設計・財務・税務など「制度や手続きなど」といった“やり方”の問題(技術的問題)と、「会社の文化や人の気持ち」といった“あり方”の問題(適応課題)が絡み合っています。どちらか一方だけの取組みでは、うまくいきません。
- 技術的問題:財務分析や制度設計など、既存のノウハウや専門知識で解決できる課題。
- 適応課題:組織や個人の価値観・習慣・信念が絡み合い、正解がなく、当事者自身が向き合う必要がある課題(例:組織文化の変革、人材育成など)。
現経営者は、無自覚に「これまでの成功モデル」をそのまま後継候補者に投影する傾向が見られますが、これが“不”のサイクルを生み出します。属人性が高い経営のままでは、後継候補者の適性評価や成長ルートも曖昧のままであることから、ネガティブな解釈がサイクリングし増幅されていきます。それが、今の状況を生み出しているかもしれません。
事業承継は、技術的問題と適応課題が絡み合っていることから、相互のダブルループ学習(これまでのやり方や前提を問い直し、根本から考え直すこと)と見える・見せる化(役割、KPI、権限など)の両面の取組みが必須です。
これからの承継「心」と「頭」の両輪
事業承継は、カリスマ型経営者の属人化経営から、目的(PMVV=Purpose, Mission, Vision, Value=会社の志や存在意義)と仕組み化による自律スタイルへのシフトが求められます。
これは、従来の成功モデルやセオリーが通用しにくい“複雑性の高い環境”が背景にあると考えます。これまでの右肩上がりの前例踏襲、トップダウン型で培われたマネジメントセオリーに適う“to do”のHOWから思考するのではなく、不確実性を前提に改めて原点に立ち返る“to be”のWhyを省察する思考様式や、結果から柔軟に学び続けられるレジリエンスを育んでいくことが必要です。
「志(PMVV)」は、組織の「心」の羅針盤です。「心」を中心に、見えやすい技術課題(システム・組織・制度)と、見えにくい適応課題(人財・学習・文化)の両方にアプローチすることが重要です。
実践へのヒント「心・技・体」のアップデート
どの承継形態でも、「志(PMVV)」×「仕組み(ガバナンス・権限・人事)」の両輪が前提です。自社の志(PMVV)を振り返りまたは再構築し、仕組み化ではHD体制/社内カンパニー制/事業部制など規模・税務・人材状況に応じて組織構造を選択。機能設計→仕組み化→人材登用の順で進め、「心・技・体」のアップデートを図ります。例えば、「志(PMVV)」を言葉にしたり、ビジュアル化したりするなどして、社内でその意味や背景、現場活用について共有することから始めてみましょう。仕組みづくりは、先ずは難しく考えず、「誰が何を決めるのか(≠するのか)」を明確にするだけでも大きな一歩です。こうした小さな積み重ねが、やがて大きな変化につながります。
「心」と「頭」の活動の主役は、次世代人財です。フューチャー・サーチ、シナリオ・プランニングなどの技法を活用しながら、自社の意義や価値(PMVV)を見出し、将来の社会的価値への関わりを言語・イメージ化しましょう。その方向性から体制の使命・機能、制度や会議体を定め、人材の登用・配置、能力開発をデザインします。これら正解のない課題に対し、対話や議論を通じて共通の時間・空間を共にし、能力・一体感・責任感を養うことで“実行の遅れ”の解消につなげます。
まとめ 未来を拓く事業承継
事業承継の本質は、「人を選ぶ」ことではなく、「志を羅針盤にし、仕組みを育む」ことです。もし、少しでも「自分の会社はどうだろう?」と感じたら、まずは一歩踏み出してみませんか?事業承継について、どんな小さい疑問や不安でも、ぜひお気軽にご相談ください。あなたの一歩が、会社の未来を切り拓きます。