Column社員コラム

脱炭素社会の実現に向け、民間企業においてもカーボンニュートラルへの対応が「努力目標」から「経営課題」へと変わりつつあります。
その中で近年、注目を集めているのが「J-クレジット制度」です。
J-クレジットとは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの活用、さらには森林整備などによる温室効果ガスの排出削減量・吸収量を国が認証し、売買可能なクレジットとして可視化する制度です。
実は今、この仕組みを活用して「地域の森林」の環境価値を現実化し、地域社会の中で循環させる取り組みに注目が集まっています。本コラムでは、企業を取り巻く外部環境の変化とともに、静岡県における“地産地消カーボンニュートラル”の意義、そして民間企業における具体的な活用の視点を整理します。
目次
企業を取り巻く外部環境
まず押さえたいのが、企業のカーボンニュートラル対応を後押ししている外部環境の変化です。制度・市場・説明責任の3つの観点から、J-クレジット活用の前提を整理します。
外部環境①:GX-ETSの本格化で「クレジットの戦略性」が高まる
企業を取り巻く外部環境が大きく変わりつつある中、見逃せないのが排出量取引制度(GX-ETS)の本格化です。
GX-ETS第2フェーズでは、一定規模以上のCO2直接排出(Scope1)を行う事業者に対し排出枠の保有・償却が求められ、クレジットは“補完策”として制度内で位置づけられています。
具体的には、制度で使用可能なクレジットとして「J-クレジット」「JCMクレジット」が示され、クレジットの使用上限は“各年度の実排出量(クレジット無効化量を控除する前の排出量)の10%”と整理されています。
また、経済産業省によると、2026年度の排出枠価格について、下限価格(調整基準取引価格)を1,700円/t-CO2、上限価格(参考上限取引価格)を4,300円/t-CO2とする考え方が示されています。
このように、排出に“価格”が付く世界が現実味を帯びるほど、クレジットは「任意のCSR」から「経営・調達・投資判断に組み込むべき戦略ツール」へと位置づけが変わります。
外部環境②:国内クレジット市場の可視化が進み、価格形成も本格化
カーボンクレジットの活用が広がる中で、国内では取引の透明性・流動性を高める動きも進んでいます。
J-クレジットを対象とした「カーボン・クレジット市場」が2023年10月11日に東証に開設され、開設以降、取引参加者としておおよそ350者程度が登録し、100万トン超、総額40億円超取引されたことが示されています。
(参考:日本取引所グループ プレスリリース「カーボン・クレジット市場の累計売買高が100万トンに到達」https://www.jpx.co.jp/news/2040/um3qrc0000022ruv-att/um3qrc000002319n.pdf)
また、再エネクレジット(電力)は、市場開設当時は約3,000円で取引されていたところ、直近では約5,000円で取引されていることも示されています。
価格形成が進むことは、企業にとって「調達戦略」の重要性が高まることを意味します。
外部環境③:“オフセットを語る”には「無効化」が必須(説明責任の時代へ)
カーボンオフセットの議論が広がる一方で、説明責任も厳しくなっています。
J-クレジットで「(例)カーボン・オフセットで実質〇トンを減らした」と対外的に発信するには、クレジットを「使う」=無効化手続きが必要であること、そして“二重利用の禁止(創出者は削減を主張できない)”が注意点として明確に示されています。
(参考:環境省「カーボン・オフセットガイドライン」https://www.env.go.jp/content/000209289.pdf)
つまり、クレジットは「買うこと」自体がゴールではなく、社内外に説明できる形で“使い切る(無効化する)”まで含めて設計することが不可欠です。
地産地消カーボンニュートラル:静岡県内の排出を、静岡県内の吸収でオフセットする
カーボンニュートラルへの社会的な要請が高まっていくなかで、我々静銀経営コンサルティングが重要視するのが、「地産地消カーボンニュートラル」という考え方です。
これは、静岡県内で排出されるCO2(GHG)を、静岡県内の吸収量によってオフセットすることで、カーボンニュートラルの実現を目指すものです。
単なる“相殺”に留まらず、J-クレジットを通じて、都市部(市街地)と中山間地を結ぶ資金循環を生み出し、社会のサステナビリティ向上や地域全体のバランスの取れた発展につなげていく――。
静銀経営コンサルティングが掲げる「地域共創・共生・循環モデル」は、こうした環境価値の循環を起点に、地域が抱える社会課題の解決と社会価値の創造を同時に実現していくアプローチです。
このモデルの基盤となるのが「適切な森林管理」です。放置された荒廃森林が増加する中、適切な維持・管理は、森林の多面的機能を維持・向上させ、社会や経済を底支えする環境を守ることに大きな意味を持ちます。
私たちは、目先の経済活動や個別の利害を超えて、社会や暮らしを形作る本質的な資本としての森林に責任を果たすこと――「1,000年先の森林を創る」という視点を持ち、未来世代へ豊かな自然を引き継ぐことを目指しています。
“単なるオフセット”を超える価値:環境価値プレミアムとストーリー
地産地消のJ-クレジットが持つ魅力は、吸収量や削減量だけではありません。
そのクレジットが本質的にどのような価値を持つか(環境価値プレミアム)、そして、そのクレジットを通じて何を実現したいか――。
地域の歴史やフィロソフィー、気候変動・生物多様性への取組といった「ストーリー」まで含めて価値化できる点に、大きな可能性があります。
静銀経営コンサルティングの取組(J-クレジット)
静銀経営コンサルティングは、J-クレジットの創出支援に加え、売買マッチング(仲介)までを含む「J-クレジットプロバイダー事業」を通じて、創出者と購入者をつなぎ、環境価値の循環を後押ししています。
また、企業のカーボンニュートラルの取組は「測る」「減らす」「オフセット」の3ステップで整理されます。自社努力による削減を前提としつつ、削減しきれない部分をクレジットで補完することで、より実効性のある脱炭素経営につなげることができます。
民間企業におけるJ-クレジットの主な活用シーン
① 企業全体のカーボンオフセット
② 商品・サービスへの付加価値
③ 環境への貢献を通じた企業価値の向上
④ インナーブランディング・人材戦略
おわりに
地産地消カーボンニュートラルは、カーボンニュートラル実現という社会的課題の解決と、地域課題の解決を同時に目指す取り組みです。
静銀経営コンサルティングは、J-クレジットを通じて「地域共創・共生・循環モデル」の構築を進め、地域と企業がともに持続可能となる未来を支援してまいります。
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【次回予告(第2回)】“買って終わり”にしない、カーボンオフセットの実務と説明力
第2回では、制度・市場の動きを踏まえつつ、実務担当者がつまずきやすいポイントを中心に「導入から対外発信まで」の流れを具体化します。
第2回の主な内容
- オフセット方針の考え方(削減努力との線引き/対象範囲)
- クレジットの選び方(用途適合・品質・地域性・説明可能性)
- 調達~無効化(“使う”)までの基本プロセス
- 地産地消を企業価値につなげるストーリー設計(地域・従業員参加・商品化の勘所)
制度や市場が動く今だからこそ、「どう活用し、どう語るか」が企業価値を左右します。