Column社員コラム



2025年、日本の中小企業M&A市場は、事業承継に加え、成長戦略としてM&Aを選択する動きが広がりました。上場企業やPEファンド、外資の動きが地方にも及び、人手不足などの課題を背景に、M&Aはより身近な経営手法の一つになりつつあります。

こうした2025年の動向を振り返りながら、今後の中小企業M&Aのあり方やSFGグループの役割について、M&Aチームの川合弓達が対談形式で語ります。



目次

2025年、中小企業M&Aの動向 ―成長戦略としてのM&Aが“当たり前”になる時代へ―

川合:2025年を振り返ると、中小企業のM&Aは、これまでとは少し質が変わってきた一年だったと感じています。件数の増加以上に、動きの広がりが印象に残る一年でした。これまでM&Aに積極的ではなかった企業が、将来を見据えた判断として、譲渡、譲受双方の当事者として動き始めている。これは大きな変化だと思います。

弓達:確かにそうですね。これまで上場企業が当事者になるケースは多くありませんでしたが、東証の上場維持基準の厳格化を契機に、MBOやTOB、非上場化といった選択肢を真剣に検討する企業が一気に増えました。
実際、静岡県内を見ても、精密部品メーカーのスター精密株式会社が非上場化に向けた判断を進めたことや、ホームセンターを展開する株式会社エンチョーがDCMグループ入りを決断したことなど、これまで安定した経営を続けてきた企業が、大きな資本政策の意思決定を行っています。


参考:d menuニュース 「TOBが衰え知らず! 2025年上期は前年比66%増の68件、年間最多を大幅更新へ(https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/maonline/business/maonline-tob_mbo_2025_haff_20250722?redirect=1


川合:背景には、やはり「業界、市場での立ち位置の違いが明確になってきた」という現実がありますよね。コロナ禍以降、同じ業界でも好調な企業と苦戦する企業の差が広がり、さらにインフレや人件費の上昇が重なった。もはやコスト削減だけでは利益を出しにくく、企業の成長のためには、規模を拡大する、あるいは経営基盤を強化する必要があるという意識が広がっています。2025年は、多くの企業が「現状維持では通用しない。変化への対応が求められている」という現実と向き合い、次の成長に向けた選択を迫られた一年だったと言えると思います。

事業承継型から成長戦略型M&Aへ

川合:2中小企業のM&Aでも、事業承継型だけでなく「成長戦略型」のM&Aに着手する企業も明確に増えています。後継者不在を起点として、企業存続のためにM&Aに着手する、というだけではなく、大手の傘下に入ることで資金力や人材、信用力を得て、もう一段成長したいというケースですね。
「会社を譲渡する」というより、「一緒に成長するパートナーを探す」という感覚に近く、他社と組みながら自社の成長につなげる一つの選択肢として捉える動きが出てきていると感じます。

弓達:実際、名古屋銀行との連携による「静岡・名古屋アライアンス」(2022年4月に静岡銀行と名古屋銀行との間で締結)を通じて成約した建設コンサルタント会社のM&Aでも、譲渡企業が県外企業と組むことで事業領域の拡大や新たなシナジーを生み出したいという明確な成長意向をお持ちでした。
その意向を踏まえ、金融機関同士のネットワークを活用してパートナーを探索した結果、事業の広がりが見込める相手とのマッチングにつながり、成長戦略の一環としてのM&Aが実現した事例だと思います。

川合:人手不足も大きなテーマです。自社だけでは採用が難しい中小企業においては、M&Aを通じてネームバリューのあるグループに参画し、人材確保の糸口をつかむ動きが広がっています。特に建設業、運送業、IT関係、医療介護や、自動車整備業など、多くの業種で人材確保が喫緊の課題となっています。こうした状況を踏まえ、大手グループに参画することで、共同採用による採用力の強化や、人材不足時に、相互の人材リソースを活用し、不足分を補完する協力体制の構築を目指す取り組みも進んでいます。

一般的な選択肢となったM&Aだからこそ、安心して進めるための視点

弓達:一方で、M&Aが一般的になる中で問題になったのが、不芳業者や悪徳なM&A会社の存在です。キャッシュリッチな企業を狙い、買収後に資金を抜くだけ抜いて会社を疲弊させる。こうした事例がメディアで報じられ、業界全体が注目されました。


引用元:中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録フィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者の公表(令和7年度公募(11月分))について」(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2025/251222m_and_a.html


弓達:そうした中で、金融機関系のM&A会社に相談が集まりやすくなっているというのはあるかもしれません。買い手の信用力や資金調達の可否まで含めて確認できる点、そしてM&A成立後も金融機関として長期的に関係が続くという安心感は大きいですね。

川合:実際、先ほど挙げた名古屋銀行との連携によるアライアンス第二号案件のように、金融機関同士が連携して買い手を紹介するケースも増えています。譲渡企業にとっても、金融機関からの紹介という事で、実態が見える会社に任せられる、安心感のあるM&Aになりやすいです。

上場企業・海外資本が地方に広げるM&Aの動き

弓達:2025年は、PEファンドの動きも印象的でした。これまで東京や関東圏の企業を中心に投資を行ってきたPEファンドが、地方にも目を向けはじめ、地域に根ざした有力企業に対して積極的にアプローチを行うようになってきたのを、肌感として強く感じています。地方企業の技術力や安定した顧客基盤といった点が、改めて評価され始めているのではないでしょうか。

川合:「そうすると、その流れは一時的なものではなく、来年以降も続いていきそうですね。

弓達:そうですね。実際に、PEファンドが仲介を介さず、直接地方企業にドアノックしているという話も聞くようになりました。成長余地のある企業と中長期で向き合い、経営に深く関与しながら企業価値を高めていくという投資スタンスが、地方にも広がってきている印象があります。

川合:一方で、外資による買収も増えていますよね。為替の影響による割安感に加えて、日本企業が持つ技術力や品質、現場力が高く評価されている。ただ、日本経済全体として見ると、必ずしも手放しで歓迎できる動きばかりではない、という見方もあると思います。
県内でも、自動車部品メーカーのユタカ技研やアツミテックが、インドのマザーサン・グループ(Motherson Group)による買収を発表したように、グローバル企業との資本提携を成長の選択肢として捉える動きも、決して珍しいものではなくなってきました。

上場企業の場合は、そこに投資家の視点も加わります。PBRが1倍割り込む状態が続くと、経営陣が考える企業価値と市場評価の間に乖離が生じます。その結果、企業は本来の経営方針や長期戦略よりも、市場からの資本効率改善要求や、株主還元強化といった要請に応えざる得なくなり、経営の自由度が制約される場面が増えてきます。こうした状況では、非上場化やグループ入りといった決断を下す企業が出てきたのも、ある意味必然だったのかもしれません。

弓達:「そうですね。だからこそ、結局のところ重要になってくるのは、企業自身が継続的に企業価値を高めていくことだと思います。
良い技術や事業を持っているだけでは十分ではなく、それをどのような成長ストーリーとして描き、投資家や市場に伝えていくのか。IRの充実や中長期の成長戦略の発信が、これまで以上に求められるようになっています。
そうした意識がより強くなったのが2025年だったのではないでしょうか。

2026年 ― 企業の成長をどう支えていくのか

川合:こうした環境の中で、私たちSFGグループが大切にしているのは、「まず経営の将来像を共有すること」から始めるということです。いきなり売却や買収の話を進めるのではなく、経営者がこの先どんな会社をつくりたいのか、どんな事業を伸ばしていきたいのか、あるいはどんな課題を解決したいのか。そうした考えを丁寧に整理するところからヒアリングを始めています。
そのうえで、M&Aが本当に最適な選択肢なのか、あるいは他の手段も含めて検討すべきなのかを一緒に考え、成長戦略の延長線上にM&Aを位置づけていくことを意識しています。

弓達:金融機関として、責任あるマッチングと、その後まで見据えたフォローができる点も、私たちの大きな特徴だと思います。M&Aは成立して終わりではなく、その後のPMIや資金繰りの再設計、場合によってはDXや業務改善といった取り組みまで含めて、経営は続いていきます。
SFGグループとしては、銀行機能だけでなく、グループ内のさまざまな知見を活かしながら、M&A後も継続的に伴走できる体制を整えています。

川合:同じグループ会社である静岡キャピタルとも連携をさらに深め、成長投資や資本政策の面でも、より幅広い支援ができる体制を強化していきたいと考えています。

弓達:また、上場企業やベンチャー企業に対しても、M&Aチームとしての立ち位置で伴走することは、今後ますます重要になると感じています。
企業のフェーズによっては、TOBやMBOといった選択肢が現実的になることもあれば、買収を通じて事業を拡大していく局面もあります。
成長フェーズにあるベンチャー企業に対しても、資金調達だけでなく、事業提携やM&Aを含めた次の選択肢を整理する支援が重要になってきています。
そうした場面で、特定の選択肢に誘導するのではなく、複数の可能性を並べたうえで経営者と一緒に考える存在でありたいですね。

川合:2025年は、そうした役割がよりはっきりと見えてきた一年だったと思います。
市場環境が大きく変化する中で、経営者が気軽に相談でき、状況に応じた選択肢を整理できるパートナーの重要性は、これからさらに高まっていくはずです。

これからも私たちは、「一番身近で、安心して相談できる存在」として、地域企業の成長や次の挑戦を支えていきたいと考えています。



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